レチノールって本当に効くの?
シワに"証拠のある"数少ない成分、論文でわかる結論
0.4%のレチノールを週3回・24週間塗った高齢者の肌では、何もない基剤(プラセボ)を塗った側にくらべ、微細なシワが有意に改善しました(P<.001)。肌の中ではコラーゲンのもと(プロコラーゲンI)やうるおい成分(グリコサミノグリカン)が増えていました。ただし、化粧品のレチノールと医薬品のトレチノインは別物で、使い始めには赤み・皮むけなどの刺激(A反応)が出ることも。刺激が苦手なら、同等の改善が報告されるバクチオールという選択肢もあります。
ポイントは、これが「使った人の感想」ではなく、片側の腕にレチノール、もう片側に基剤を塗って比べた対照試験だということ。しかも肌の生検で、見た目だけでなく皮膚の中の変化まで確認しています。美容の話題で、ここまで踏み込んだ証拠がある成分は多くありません。
(基剤との比較)
(うるおい成分)の増加
(コラーゲンのもと)の増加
「シワが浅くなった」という見た目の変化だけでなく、その裏で皮膚のコラーゲン産生やうるおい保持の材料が増えていた——これがレチノイドの強みです。ただし、いずれも統計上の"差"の話であり、劇的に若返るといった話ではありません。効果は穏やかで、数か月単位で少しずつというのが実像です。
レチノイドはいくつもの種類の総称です。トレチノイン(レチノイン酸)は医薬品で作用が強く、日本では医師の管理下で使われます。一方、化粧品に入るレチノールは、肌の中でレチノイン酸に変換されてから働くため作用は穏やか。「レチノール入りだからトレチノインと同じ効果」ではありません。強さと目的が違うものだと理解して使い分けるのが大切です。
使い始めの「赤み・皮むけ」は何なの?
レチノイドを塗り始めると、赤み・乾燥・皮むけ・ヒリつきといった刺激反応(いわゆるA反応・レチノイド反応)が出ることがあります。これは肌のターンオーバーが変化する過程で起きやすいもの。だからこそ、低濃度・少量・低頻度から始めて慣らすのが基本の考え方です。実際、レチナール(レチンアルデヒド)を使ったRCTでも、低濃度クリームで光老化肌の改善が確認されています。
- 低濃度・少量から:最初は週1〜2回など少なめに。慣れてきたら頻度を上げる。
- 保湿とセットで:乾燥しやすいので、保湿剤を併用して肌のバリアを守る。
- 日中はUV対策を:ターンオーバーが変化する時期は、日焼け止めの併用が基本です。
刺激が苦手な人へ——「バクチオール」という選択肢
「効果はほしいけれど、赤みや皮むけがつらい」という人に注目されているのがバクチオール(bakuchiol)という植物由来成分です。バクチオール0.5%とレチノール0.5%を12週間、直接くらべたランダム化二重盲検試験(n=44)では、シワの面積も色素沈着も、どちらの成分でも有意に減り、両者のあいだに統計的な差は認められませんでした。さらに、バクチオールのほうが皮むけやヒリつきといった刺激が少なかったと報告されています。
「差がなかった」というと物足りなく聞こえるかもしれませんが、これはバクチオールがレチノールと同じくらいの改善を、より低刺激で出せたという意味です。ただし参加者は44人と小規模で、期間も12週間と短め。「バクチオールのほうが優れている」とまでは言えません。刺激で続けられない人にとってのもう一つの現実的な選択肢、という受け止めが妥当です。(※化粧品は、特定の効果を保証するものではありません。)
よくある質問
Q化粧品のレチノールと医薬品のトレチノインは同じ?
Q使い始めの赤みや皮むけは大丈夫?
Q刺激が苦手。代わりになる成分は?
- 0.4%レチノールを24週間で微細なシワが有意に改善(P<.001)とRCTで報告
- 肌の中ではコラーゲンのもと・うるおい成分が増加していた
- 化粧品のレチノールと医薬品のトレチノインは別物。作用の強さが違う
- 使い始めの刺激(A反応)に注意。低濃度・少量・保湿・UV対策とセットで
- 刺激が苦手ならバクチオールが同等の改善を低刺激でとの報告(小規模)
※本記事は公開されている学術論文をもとにした一般的な情報提供であり、特定の化粧品・サプリメント・治療の効果を保証するものではありません。化粧品に配合されるレチノールは、医薬品のトレチノイン(レチノイン酸)とは異なります。気になる肌の症状がある場合は皮膚科医にご相談ください。
参考文献
- 1. Kafi R, Kwak HS, Schumacher WE, Cho S, Hanft VN, Hamilton TA, King AL, Neal JD, Varani J, Fisher GJ, Voorhees JJ, Kang S. Improvement of naturally aged skin with vitamin A (retinol). Arch Dermatol. 2007;143(5):606-12. doi:10.1001/archderm.143.5.606. PMID: 17515510. PubMed
- 2. Dhaliwal S, Rybak I, Ellis SR, Notay M, Trivedi M, Burney W, Vaughn AR, Nguyen M, Reiter P, Bosanac S, Yan H, Foolad N, Sivamani RK. Prospective, randomized, double-blind assessment of topical bakuchiol and retinol for facial photoageing. Br J Dermatol. 2019;180(2):289-296. doi:10.1111/bjd.16918. PMID: 29947134. PubMed
- 3. Kwon HS, Lee JH, Kim GM, Bae JM. Efficacy and safety of retinaldehyde 0.1% and 0.05% creams used to treat photoaged skin: A randomized double-blind controlled trial. J Cosmet Dermatol. 2018;17(3):471-476. doi:10.1111/jocd.12551. PMID: 29663701. PubMed
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