ナイアシンアミドは本当に効くの?
シミ・皮脂・バリア、RCTでどこまで示されたか正直に
ナイアシンアミドは、①色素沈着を薄く見せる方向(5%)、②皮脂を抑える方向(2%)、③肌バリアを助ける方向のそれぞれに、人を対象にした試験の裏付けがあります。とはいえ多くは4週間ほどの短期・少人数の研究で、効果の大きさには個人差があります。「気休め」ではないが「魔法」でもない——地道に土台を整えるタイプの"優等生"成分と捉えるのが実像に近い、というのがBibidenceの読み方です。
ナイアシンアミド(ビタミンB3の一種)は、化粧品では保湿成分として、医薬部外品では「メラニンの生成を抑え、しみ・そばかすを防ぐ」美白有効成分として承認されています。ここで大事なのは、「防ぐ」範囲の話であって、できてしまったシミを消す医薬品ではないという点。まずはこの前提を押さえたうえで、研究を見ていきます。
①色素沈着:「作らせて渡さない」を狙う
もっとも有名なのが、5%ナイアシンアミドの研究です。肌の色は、メラニンを作る細胞(メラノサイト)が作ったメラノソーム(色素の袋)を、表皮の角化細胞に"受け渡す"ことで濃くなります。ナイアシンアミドは、この受け渡し(転送)をブロックする方向にはたらくと考えられています。
この研究で示された「メラノソーム転送を35〜68%阻害」という数字は、肌そのものではなく、細胞を一緒に培養した実験モデル(in vitro・共培養)での結果です。試験管の中で起きたことが、そのまま人の肌で同じ割合で起きるわけではありません。ここを「肌で68%薄くなる」と読むのは誤りです。
では人の肌ではどうだったか。同じ論文の臨床試験では、色素沈着のある18人と、日焼けによる色素沈着のある120人を対象に、5%ナイアシンアミドを塗布。その結果、4週間でvehicle(基剤のみ)と比べて色素沈着が有意に減少し、肌の明るさが増したと報告されました。試験管の話と人の肌の話を分けて読むと、「メカニズムは細胞実験で、実感は短期の臨床で確かめた」という構図が見えてきます。
(in vitro・共培養モデル)
(vehicle比・臨床)
(2週・4週/50人)
②皮脂:日本人試験で"テカリ"に届いたデータ
皮脂やテカリが気になる人にうれしいのが、日本人を対象にした2%ナイアシンアミドの試験です。50人・4週間で、皮脂排出率(SER)が2週・4週の時点で有意に低下したと報告されています。日本人の肌質での短期データがある、という点で参考にしやすい研究です。
これは50人・4週間という少人数・短期の試験です。「皮脂が出にくくなる方向のデータがある」とは言えても、ニキビや毛穴そのものを治すと読むのは行き過ぎです。皮脂が気になる程度なら試す価値はありますが、症状が続く場合は自己判断せず皮膚科の受診を。
③バリア:うるおいを"逃がしにくくする"方向
3つめは肌バリア。乾燥や敏感さの指標としてよく使われるのが経表皮水分蒸散(TEWL=肌から水分が逃げる量)です。この値が下がるほど、バリアが水分を保てている方向と解釈されます。
ランダム化比較試験(RCT)で、経口ニコチンアミド(ナイアシンアミドと同じビタミンB3系)でTEWLが低下したと報告されています。つまりバリア機能を助ける方向のデータです。ただし注意したいのは、これは「飲む」タイプの研究だということ。塗るスキンケアの効果とそのまま同じではありませんが、「この成分がバリアに関与しうる」という傍証にはなります。
- 色素沈着:メカニズムは細胞実験、実感は短期の臨床で「vehicleより有意」。
- 皮脂:日本人50人・4週で「排出率が有意に低下」。少人数・短期。
- バリア:経口RCTでTEWL低下。塗布とイコールではないが方向性の裏付け。
- 総じて「複数方向に控えめな根拠がある優等生」。魔法ではなく土台づくりの成分。
医薬部外品でナイアシンアミドが名乗れるのは「メラニンの生成を抑え、しみ・そばかすを防ぐ」まで。「シミが消える」「肌が白くなる」といった表現は、承認された効能の範囲を超えます。研究で示されたのも「防ぐ・目立ちにくくする方向で短期に差が出た」という内容で、既存のシミを治療するものではありません。広告の強い言葉と、論文が言えることの差を見分けるのが大切です。
よくある質問
Qシミに効く?
Q皮脂・テカリにも効く?
Q敏感肌でも使える?
- 色素沈着:5%の臨床で4週にvehicle比で有意に減少(転送阻害35〜68%は細胞実験の値)
- 皮脂:日本人50人・4週で皮脂排出率が有意に低下(2%)
- バリア:経口RCTでTEWLが低下=バリアを助ける方向
- "優等生"だが万能ではない。「防ぐ・整える」成分で、シミを消す医薬品ではない
※本記事は公開されている学術論文をもとにした一般的な情報提供であり、特定の化粧品・サプリメント・治療の効果を保証するものではありません。化粧品・医薬部外品の効能効果は承認された範囲に限られます。気になる肌の症状がある場合は皮膚科医にご相談ください。
参考文献
- 1. Hakozaki T, Minwalla L, Zhuang J, Chhoa M, Matsubara A, Miyamoto K, Greatens A, Hillebrand GG, Bissett DL, Boissy RE. The effect of niacinamide on reducing cutaneous pigmentation and suppression of melanosome transfer. Br J Dermatol. 2002;147(1):20-31. doi:10.1046/j.1365-2133.2002.04834.x. PMID: 12100180. PubMed
- 2. Draelos ZD, Matsubara A, Smiles K. The effect of 2% niacinamide on facial sebum production. J Cosmet Laser Ther. 2006;8(2):96-101. doi:10.1080/14764170600717704. PMID: 16766489. PubMed
- 3. Chen AC, Martin AJ, Dalziell RA, Halliday GM, Damian DL. Oral nicotinamide reduces transepidermal water loss: a randomized controlled trial. Br J Dermatol. 2016;175(6):1363-1365. doi:10.1111/bjd.14648. PMID: 27062605. PubMed
出典はPubMed収載の書誌情報にもとづき、バンクーバー方式(ICMJE)で記載しています。効果量は原著の抄録・本文で確認した数値のみを掲載し、細胞実験(in vitro)とヒト臨床の結果を区別して記載しています。